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アクロマートAF発案の背景と今後

野鳥撮影には超望遠レンズを必要としますが、それには天体望遠鏡を転用するのがよいという理解が周知のものでした。ところがやり始めてみると、無限遠の距離にあって微動だにしない天体の観察・撮影に開発された機材を、それがいかに優れたものであっても、眼前でちょこまか動く小さな生き物を撮るのに転用するには相当の無理があることを思い知らされました。それを容易にするための補助機材もあるにはあっても、わたしとしては到底満足できるものではありません。

野鳥の撮影をMFで行うためには、高度な職人的能力とたゆまぬ修練が要求され、誰にでもおいそれとできるものではありませんが、練習を重ねればそれなりにうまくなることも事実で、そこにはあたかも、スポーツとしての弓道やクレー射撃に通ずる面白さが見出され、それはそれとして楽しまれておられるかたも少くありません。

しかし、そのことと、この高度に発達した技術社会において、技術で解決できるものは技術で解決する方策を求める努力をすることとは矛盾しません。手ノコギリで板を真っ直ぐに直角に切り落とすまでには数年の修行が必要です。しかし今の時代、それでは間に合わないのです。 誰でも使える卓上切断機なしには現代の建築作業は成り立ちません。天体望遠鏡の完全AF化の発想の根底はこれです。技術によって困難を解決し、野鳥撮影を快適なものにし、その恩恵が多くのひとによって享受されることです。

かなしいかなわれわれアマチュアは、それに必要な機材を望んだとしても、レンズ一個磨けないのです。そこでいきおい既存の市販機材を自分なりに改造することで道を開かざるをえません。オリンパスZD70-300を改造した「アクロマートAF」はこうして実用化にこぎつけたものです。改造は、レンズ前群は除去しますが残余のレンズ群はすべてそのまま流用するものでした。しかし、このほど HN rinoさん によって、すべてのレンズを除去して、AF機構のみを独立して利用するという大胆、かつ、革新的な手法が編み出され、その高性能が実写検証されました。これによって、天体望遠鏡の完全AF化という課題は広大な自由度と拡張性を獲得したことになります。現段階では改造作業がだれにでも簡単にというわけにはいきませんが、これの克服も時間の問題だと思っています。

                                 2010.06.21   Secnat

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# by achromat_af | 2013-12-30 00:00 | アクロマートAF発案の背景と今後  

アクロマートAFの 可能性

今回、Secnatさんのご協力もあってアクロマートAFという新しく実用化された望遠レンズのシステムについて解説した物をブログ形式で発表させて頂きます。
これをやって見たいと願うシューターの一助となればとの動機です。
このブログでは、其の概念から製作方法などを記録していきたいと思います。
何も予備知識無くZD70-300mmを利用したアクロマートAFシステムを見た時に、これは何だろう?どこのメーカのレンズなのかと思われることと思います。
フォーサーズ系のレンズで超望遠レンズって無いですものね。
※ここで、35mm換算で焦点距離1000mm以下は超望遠とは言わないそうです(笑)。
「アクロマートAF」って何ですかと聞かれるので何を持ってこの呼び名とするかを提示しておきたいと思います。
天体望遠鏡の前玉などを利用し、アウターフォーカスの一眼用レンズを外部鏡筒に接続しインナーフォーカス化して望遠レンズとなした物です。
フォーカスレンズとして元の一眼用レンズ先端にアクロマートレンズを採用した事からこの名称をSecnat氏が名付けた物です
前玉や使用する鏡筒、AFユニットとなすレンズにはどれこれで無ければならないという制約は無く、作動原理を理解された諸氏が他メーカーの一眼レンズを改造されて成果を上げておられます。
尚、アクロマートレンズはネガティブアクロマートでも作動成功しており、ED・SDレンズもアクロマートレンズという総称としています。

※尚、コメント可能の設定で行きますので「説明が判り難い」「間違いがある」その他が有りましたらご指摘等いただければ幸いです。
「天体は微動だ!」は判っておりますので突っ込は禁止です(笑)
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# by achromat_af | 2013-12-29 00:00 | アクロマートAF発案の背景と今後  

BORG 125SD AF化検証レポート

1. はじめに

天体望遠鏡のAF化の手法は現在のところごく限られています。私のとった手法は「アクロマートAF」と名づけているもので、既存のカメラレンズ(単焦点もしくはズーム)で前玉フォーカスを行っているものから光学系を除去し、AF機構のみを利用して、本来MF作動している天体望遠鏡をAF化するものです。名称は便宜上のもので、技術仕様を規定するものではありません。アクロマートレンズを多用することからそうしたまでです。もちろんアポクロマートレンズを含み、さらにはネガティブアクロマチックレンズ(テレコン、エクステンダーなど)を使う場合もあります。

市販の超望遠カメラレンズのAF機構は、質量の大きい前玉系を動かすのを避けて、前群以外の光学系をフォーカス群とするインナー/リアフォーカス方式(キャノンさんの用語によります)が採用されています。そして、インナーフォーカス方式では凸レンズが使われ、リアフォーカス方式では凹レンズが使われます。ここで「アクロマートAF」との関連で問題なのは、両方式はそれぞれAF駆動アルゴリズムは正反対であって、カメラ側がそれを規定していることです。つまり、上述の前玉フォーカスを行っているカメラレンズを利用するかぎり、カメラ側の規定に従う外なく、そのカメラが位相差検出タイプであれば、フォーカスレンズとしては凸レンズを使うことになり、凹レンズを使うと動作不能となります。コントラスト検出タイプでは原理的に両者に適応します。
以上のことから、「アクロマートAF」は、MF天体望遠鏡に、前玉フォーカスを行っているカメラレンズを組み込んで、天体望遠鏡をインナーフォーカス化しているわけで、この意味では別段に特殊なことをやっているものではありません。

125SDのすぐれた光学的性能については、多くの方々がすでに検証されていますので、私はそれに屋上屋を重ねる任ではなく、手持ちの機材、ソニーさんのα55、を使ってどのようにAF化したかに限定して、結果を報告することとします。基本となるコンセプトは同じですから、他の機材を使った場合も類推していただけるものと思います。また、作業を進めるほうとしても、報告を読んでいただく側にも、直感的に把握し易いと思いますので、市販の超望遠カメラレンズに倣って、「ゴーヨン相当」「ロクヨン相当」「ハチゴロー相当」などという枠組みを設定して報告します。
(添付 Image 1-1.jpg)

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2. ゴーヨン相当

125SDの素の仕様は、750mm F6 ですが、これを500mmにReduceしますと、実効F4 となり、まさにゴーヨンで、技術的に問題となることはなく、とくに実施検証はしておりません。


3. ロクヨン相当

この場合は、600mmF4.8となり、おおまかにロクヨン相当といってよく、もっとも汎用性があります。使ったAFユニットはトキナーズーム100-300mmです。超望遠の場合、ほとんど絞り開放で使うことが多いですが、場合によって少し絞ることによって、薄すぎる焦点深度を緩和することができます。これがトキナーでは可能です。
(添付 Image 3-1,2,3,4,5)

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4. ”シチゴロウ”(700mmF5.6)は可能か

”シチゴロウ”と呼ばれるカメラレンズは存在しませんが、125SDで実施、検証してみました。方法としては、私のいう「重畳仕様」で、テレコンでExtendしてレデューサーでReduceするという方法です。具体的には、ボーグテレコン7214とアクロマート250mmを使っています。AFユニットはバックフォーカスの短いSAL85F28を使います。(添付 Image 4-1,2,3 )

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5. ハチゴロー相当

125SDでこれを行うにはもちろん重畳仕様によりますが、計算上、800mmF6.4となり、位相差AFが不安定となる領域に入ってしまいます。検証は790mmF6.3で行いましたが、この限りではとくに障害はありませんでした。テレコン7214とアクロマート300mmを使いました。
(添付 Image 5-1,2)

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以上                     2011.06.05 Secnat 記

# by achromat_af | 2011-12-27 18:14  

現在のアクロマートAFシステム 四形態

その後、紆余曲折がありましたが、現在のところ下図で落ち着いています。
125SD 実焦点距離600mmと77EDII 480mmは止まり物用、45EDII 280mmは望遠マクロ用、71FL 300mmは飛び物用です。77EDIIと45EDIIは図示の接続位置でベースユニットを共用し、カメラα55は全システム共用です。(2011.05.20 Secnat 記)
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飛び物用は50EDIIに変更しました。(2011.05.27)
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飛び物用をさらにWilliam Optics製66SDに変更しました。(2011.06.01)
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こういうのもあります。ワインオープナーを使って(改造して)”トキナーズーム・オープナー”にしています(100-300直進タイプ)。恰好は仰々しいですが、そのぶん使い勝手は最高です。仰角、俯瞰でも自重でズームが勝手に動くことはありません。(2011.6.24)
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# by achromat_af | 2011-12-26 23:59 | アクロマートAF実用機材  

ボーグ補正レンズ【7870】をAFレンズとして使う

ボーグさんから商品名「マルチレデューサー0.7×DGT 品番:【7870】」が発売されました。このほどこの補正レンズをAFレンズとして使って好結果を得ましたので報告します。この補正効果というのは、画面周辺で像が甘くなるのを補正するもので、通常、野鳥や花などを個体として中央重点で撮影するときには必須ということはありませんが、被写体の状況によっては画面の隅々まで均一なピントを求めるとき有効となります(たとえば、白鳥の編隊飛行など)。

アクロマートレンズと違って、適正な補正が行われる固有のレンズ位置が限定されていて、この補正レンズの場合、実験的にマウント面から100mmくらいにレンズ群の天面が来るようにしなければならず、また、レンズセルの径が(フルサイズ対応とかで)48mmありますので、AFユニット内筒への埋め込みはままなりません。実際には、ソニー純正の85mmF2.8SAM(改)を使って実現しています。改造記事はこのブログにあります。

P.S.
その後、このAFベースユニットでは7870の重量に耐えきれず、不具合が発生しました。より強靭なAFベースユニットが必要です。

ボーグ補正レンズ【7870】をAFレンズとして使う_d0174444_20453762.jpg




写真のように画面全体にわたって適切な補正が行われています。もちろんですが、中央重点の画像であっても、補正されていて悪いとうようなことはなく、花の写真など周辺のDefocusのボケが安定しているという効果があります。
(71FL AF@Borg7870)
ボーグ補正レンズ【7870】をAFレンズとして使う_d0174444_19234919.jpg

# by achromat_af | 2011-09-15 19:23